数年前に読んだ本ですが、最近改めてこの本の素晴らしさに気づきました、というお話です。
モノを見る
以前、僕は企業のプロダクトデザイナーとして働いていました。今から何年も前の社会人1,2年目、製品開発のため、僕が描いたスケッチをレビューしている時に直属の上司から言われたコトバがあります。
「もっとモノを見ろや!普段、全然モノ見てないやろ!」
未だに鮮明に覚えているそのコトバ。個人的には、人並みにモノを見てきたつもりでしたが、それは、あくまでも「つもり」だったようです。
その時の上司のコトバの意図としては、僕が描いた製品スケッチは、「コンセプトに沿った形状になっていない」「使い手に寄り添った操作形状になっていない」「形をどう見せたいかが伝わらない」ということのようで、『普段からモノを見て、そのモノがどんな印象で、なぜそのように感じ、造形やディテールの処理がなぜそう感じさせるのかを明確に言語化できないから、スケッチや3Dからコンセプトや意図が感じられない』ということでした。
以来、僕は本当の意味で【モノを見る】ようになります。
モノを見る際は、
①メモ帳にそのモノの印象を書く。
②そのモノの造形を手描きで模写。
③どのような造形・処理が、その印象を与えているのかを論理的に説明できるように言語化。
していました。懐かしいです。
また当時は【Sumally】を活用して、さまざまな製品画像をジャンル分けもしていたり。
おかげで、製品の外観デザインはしなくなった今でも、目的に合わせた形状の見せ方、形状の構成・処理はそれなりに引き出しがあるし、言語化できると思います。
それから時は経ち、最近は仕事の幅も広くなり、モノを見る習慣も薄れてきましたが、数年前、息子が2歳くらいのときに図書館で見つけた「木をかこう」ブルーノムナーリ著を読んで、改めて【モノを見】たくなるのでした。
ブルーノムナーリ「木をかこう」
本の内容としては、ブルーノ・ムナーリ(イタリア出身のアーティスト、デザイナー、作家など肩書きが多い)が、自然に生えている木がいくつかの法則を基に構成されていることを、子供にもわかるようにわかりやすく楽しく書いた絵本です。
この本を読み、よくよく木を見てみると、確かに本に書かれている法則性に沿って生えていることに気付きます。たまたま、そこにそのように生えているわけではないんだ、と。
木にはそこにそのような形状で生えている理由があって、それを確かめるように散歩しながら木を見ることがとっても楽しくなる。ここには強い風が吹くのかなぁとか、だからこんな感じに生えているのかなぁとか。こういう風に見るとまた異なる形状をしているなぁとか。
そんなことを考えていたら、木だけではなく、改めて【モノを見る】ことをしたいと思ったのです。
そして、それと同時に昔の上司のコトバも思い出すのでした。
お子様向けの絵本ではありますが、モノの見方が凝り固まった多忙なビジネスパーソンにも、是非おススメしたい一冊です。
コメント